この本のもっとも重要なところは、最後に、その〝肉食〟のヨーロッパからもたらされた
日本の民主主義について言及しているところだと思う。 「『自由と平等』は、ヨーロッパやアメリカでは、本来、伝統的な階層意識や社会意識と、 それに反撥するすさまじい個人意識との対立をやわらげる、一種の解毒剤であった。 ……ところが、思想的伝統のまったくちがう日本にもちこまれると、 フィクションがいつのまにか実体化され、よきにつけ、あしきにつけ、 単なる解毒剤以上の働きをしてしまったのである」 もともと階層意識が明確に分断されていなかった日本では 明治維新以降、平等の実体化が進み、その弱い階層意識はどんどん踏みつぶされてしまった。 それによって、社会の最下層でも立身出世できるパイプがいたるところにでき、 明治以来、日本が急速に発展した活力源となっていたとする。 これが民主主義思想が入ってきた「よきにつけ」の面。 そして、「あしきにつけ」とは、 民主主義というフィクションを実体と勘違いし、 「その場かぎりのムード的な多数意思」に引きづられるようになったことである。 こうして生まれたのが太平洋戦争の悲劇である、とする。 (満州事変の勃発1931から、太平洋戦争終了1945まで 14年の間に首相が13回も変わっていたようである) ・・・・ 民主主義で消化不良を起こすというより、なんだかちょっぴり下痢してる? この本が書かれたのは、昭和40年だけど、 日本人の政治家を選ぶ力が乏しいのは残念ながら今もそうだと思う。 (この二世議員やタレント議員の多さを見るにつけ〝選びたくない〟〝選べない〟のだと思う) こうしたことは言われていたけれど、 それを食や気候風土あたりから論じて達したのはすごい。 しかし、もう世界じゅうが民主主義化する潮流だったのだから、 無理でもなんでも、猫も杓子も民主主義国家なのである。 日本の場合、 社会が右肩上がり、あるいは安定の時にはそれなりにうまく作用するようだけど、 社会不安が増したり、下向きになったときはその弱さが露呈してしまうのか。 まあ、ここらへんのことについては、まだまだわからないけれど、 この「首相がよく変わる」というのは、まずどげんかせんといかんと思う。
by room2room
| 2012-04-22 00:17
| 本
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